ぶっ飛ばし君【風林火山】の開発秘話
2014年9月14日にG2中部ブロック予選北名古屋場所へ参戦してきました。
その名も【ぶっ飛ばし君 風林火山】+【カジミツスピン】
さて、優勝したコマにはそれなりのストーリーがありました。
制作は6月下旬、それまでに頭の中で構想していたコマの作成にかかりました。
当初は<軸無し、4枚の羽根が立っていて下部胴体20㎜を逆手で回し投げる>というコマでした。イメージは土俵の上にヒトデが回っている・・・でした。
しかし、1週間をかけて作っても、羽が開かない、開いて回ってくれない、土俵にうまく乗らない・・・初めてイメージが形になりませんでした(泣)
妻の叱咤激励
7月下旬、そのヒトデに仕方なく軸を取り付け、4枚羽が開くコマに変貌しました。
その姿を見た妻は「ねこパンチの偽物 偽パンチ作ってどうするの??」「皆さんの望むカジミツは、優勝ではなく今まで誰も作った事がないインパクトのあるコマでしょ!」と・・・叱咤激励されました。
そこで、まったく逆の発想をした【開いた羽はバランスを取る為で胴体はどんな攻撃も受け止めるぐらい巨大な超重量級コマ】の作成に取り掛かりました。
失敗作の完成
真鍮ケース内部にタングステン鋼のコマが入っていて羽と連結している。
そして、ルール通り片手のみで胴体を握ってぶん回す・・
遠心力で羽を加速させ巨大な胴体部を直立させる。一番下に磁石と両面テープを巻く・・
作る途中で、「こりゃ無理だ!回るわけない」って気づくが時すでに遅し。
巨大な失敗作の完成(内部にヘビーメタル50mm入り、総重量400g超)。
カジミツスピン誕生
諦めながら偽パンチの回す練習をしていたら3回に1回は回転不足で上手く回らない。
重く羽も長いので、指の捻りだけでは十分な回転を得ることができない。
練習中に妻から、「偽物は本物には勝てないよ、失投して負ける可能性が多いんだからあなたは!」と叱咤激励2回目・・・
確かに羽物は投げにくい、今回は各TV局・マスコミ等が多く来る場所である。緊張して投げミスする可能性は大!お調子者の僕はさらに浮わつく可能性も大!「じゃあ、このコマを失投しない構造にし、回転させる方法を考えよう!」と思いました。
規定ルールにより、片手指のみで重量のあるコマを保持しなおかつ回転数を上げていく方法はないだろうか?実はこれが1番難しくて1週間以上、作っては壊し、また作っては壊しの日々が続きました。今まで作ってきた多種多様のコマの部品を頭の中で組み替えていた時に閃いたのです!!
「コーヒーカップ!なら回せるかも!」昔、遊園地にあったカップル用コーヒーカップのハンドルを思い出し、軸の上に空回りするハンドルを取り付けて、指で挟みこみそのまま保持して指先でコチョコチョと回し続ける。それがカジミツスピンでした。
初撃の勢いで羽を広げ、その後はコチョコチョと回してドンドン加速させていく・・
ぶっ飛ばし君【風林火山】のメリット
最初から回転している風林火山は、土俵の上にそっと置くだけで失投はしない。
相手は、回転しているコマに対して投げてくるのでそのまま場外に飛ばされる。
試行錯誤の結果、見た目は軸の上に真鍮のホイール(ベアリング内蔵)があるだけのちっぽけな部品なのに、最高で最強の部品になりました。
G2を制覇した【ぶっ飛ばし君 風林火山】がすごいのではなく、実はカジミツスピンがすごいのです!!
審議について
コマゲージに通し回転を見せる時にも「他に回して変化するんじゃないの?」とか、「他の回し方は無いの?」と言われましたが、他の会社のコマは「右に回るの?左にも回るんじゃないの?逆さに回らないの?」と聞かれてもいないので、不公平感を感じこの場でカジミツスピンを見せる必要は無いと思いました。
その後、予選で審議になりましたが、その理由は現在でもよく分かりません。
僕は、「補助具無しで片手の指だけで回しているのに、審議になること自体おかしい!」「カジミツだからって、回し方まで規制されるのはおかしい!」反論しました。土俵を回転の補助具だと言われた場合を想定して、空中で【カジミツスピン】の練習もして、すべて対処できるようにしていました。
例えば、対戦者から「大きすぎて卑怯だ!」と言われた時は、「投げる時に、高さ・重さは相手に対して直接影響はないが、大きさ(幅)は土俵の半分の125㎜までならお互い平等である」との理由から風林火山は最大幅124㎜に収めたのです。
片手以外を使って回しているのになぜOK?!
大企業がその資本金を使い、自社オリジナル鋼(例えばタングステンの2倍の比重)を3DCADで設計、その形状をシュミレーションし最新精密機械で加工する・・・町工場が勝てる訳が無い。
アイデアを使ったコマが出る毎にルールに規制をかける・・・
町工場は勝利を諦めて負けなさいって言ってるようなものです。
僕は少年少女に、「資本力に負けないコマ作るためには、何かアイデアがあれば戦うこともできる、諦めることは無い」と教える事の方が大事だと思っています。
今現状でカジミツスピンを纏った【風林火山】は、最強最悪コマであると断言できます。自身、これ以上のコマはもう作れません<(_ _)>
最後に、産み出す苦労も知らずに、技術ならOK!アイデアはNG!というような偏ったルール規制することの無いように願います。
有限会社カジミツ
代表 松宮政美