全日本製造業世界コマ大戦2015 G1大会をふりかえって ~ 天下不武開発秘話 ~
初めて開催される世界コマ大戦に中部ブロック予選優勝者として出場しました。
各エリア・ブロック予選を勝ち抜いた29社(海外6か国/11社 国内18社)が前夜祭で抽選をし、即日激闘の末、≪審議隊トミーとマツ ~カジミツ≫は初代世界チャンピオンになりました!!
【天下布武】と名付けたそのコマは、内蔵電池とモーターの回転運動で、接地しているお皿が同調して回り、その外部に重量級タングステンで鎧の様にガードする。そして「ゆっくり回り、戦わない」をコンセプトとし電池が切れるか倒れるか以外は負けないというコマでした。
トミーとの出会い
3年ほど前、G2関東大会で優勝したコマはジャイロコマ(電池+モーター)だった。製作者は安久工機・ハッピートミーこと福富くんだった。
このコマの衝撃は、僕にとって「相手より長く回ったら勝ち」っていう概念は無くなったなと思うほどでした。そのコマに勝つためにどうするか?と考えた結果が、のちに賛否両論になった【ぶっ飛ばし君】だったのです。
その後、G3大田区ユニーク場所で戦い意気投合し家族付き合いにまで発展しました。
■過去のコマ大戦出場履歴、もちろんG3大田区場所も→http://kajimitsu.com/spinatop/
ジャイロコマとは?
内蔵する電池+モーターの力が回っているコマのバランスを補正し倒れにくくする。通常よりはるかに長く回る。しかし、内部スペースがいるので軽量になり、単独では長く回るが、接触する対戦には不向きであった。(コマ大戦協会長回し選手権メカニカル部門参照)
ジャイロコマ計画
ジャイロコマ制作は2年以上前に出来ていた。電池消耗時間17分弱。
工場で試してみても実戦ではどうなるかわからない・・・
そこで、G3北名古屋場所を実験に使った。32社(予選総当たり+決勝トーナメント)方式は実験場としては最適だった。ただし結果は、決勝トーナメント1回戦敗退・・・この結果で欠点がハッキリしたのだ!
相手コマと接触してはいけない、外周部にカラー(ガード)が必要なのだと。
そこでジャイロコマの形状候補は2点。
1・先端を尖らせて土俵端で止まる。(相手に当てられにくい)
2・カラーを纏い粘り続ける。(接触しても内部が回っている)
さて、どうするか??
■ごん吉くんコマ購入はコチラ(ジャイロではないよ)→http://store-m.jp/SHOP/koma-014-002.html
G2からG1へ
接触しなければジャイロコマに長時間回り勝つコマは存在しない。
唯一の負けは場外に落とされる事であるが、コマ自体の大きさ制限があれば、当てられにくいと考えていた。そこでレギュレーションの変更が必要だと思ったのである。
G2中部ブロック予選は総勢88社が集まる最大の大戦となった。
この大会には電池の関係上ジャイロコマは不向きであったので、違うコマを考えた。それが【風林火山】である。このコマで圧倒的勝利すれば間違いなく、大きさ又は重さ等のレギュレーションの変更になると考えていた。
■ぶっ飛ばし君風林火山に関してはコチラ→http://kajimitsu.com/hurinkazan/
■G2中部ブロック予選優勝ページはコチラ→http://kajimitsu.com/komawing2/
想いは伝わる!!相棒ゲット!
「俺と世界一の舞台に立たないか?」とトミー(福富くん)にお願いした。
彼は「OK!」と快く承諾してくれた。
最初からジャイロコマはトミーとコラボすると決めていたから。そして、彼にお願いした最大の理由は・・冷静さと分析力であった。
今回のメディアは各会社への 追っかけもありその数は半端なく 緊張感+ハプニングに対応するために1人で投げ抜くのは無理だと思っていたからだ。
心強い相棒を得て世界制覇コマ作成にかかっていった・・
そして、試作が始まる!プラン1制作
新ルールにより高さ制限が出来た(60mmまで)。
まずは参加社のコマの特性及び敗戦した時の相手のコマについて調べ、そこから世界戦にはどういうコマで参加するかを推測した。
その結果、羽物コマは2~3社、イボ付コマは3~4社・・・と想定。すべてのコマに勝てるコマは無理と考え、羽物に対しては1/9確率で当たらないように願った。
とりあえず、試作品が完成した。
先端部は取替可能にした
先端部の角度や材質など試行錯誤した結果・・・止まるコマは完成。
しかし、奥様から、
「土俵の真ん中で投げても失投するのに、隅っこで投げれるわけないじゃん! すごいカメラの数だよw・・ムリムリ・・」とまたしても叱咤激励のお言葉。
「風林火山コマみたいに、置くだけにしないと今回は失投が多い場所だよ!」と言われ、プラン1計画は中止となった・・・チーン・・・
そしてそして、天下布武試作にとりかかる 試作1
構想の中で夢だった(ゆっくり回り続けるコマ)の作成に入った。
元々このコマは京都キセイレン特別場所に出場しようとしてやめたコマ(嘆きの塔)のコンセプトと同じである。
ゆっくり回るコマに対して、通常のコマはその回転力を奪われ立って回り続ける事が出来ない。
嘆きの塔・・・未出場・・・チーン・・・
試作1は、上部アルミ、下部がタングステン鋼で重く、外側に薄い真鍮製フリーカラーを付け、相手のコマの影響を受けないタイプにした。
総重量140g・・200g無いと弾き飛ばされると思っていたが低重心なので倒れにくいコマが一応完成。
イボ付きコマ、羽物コマに対抗する為に重量をどうするか?
大型電池とモーターにすると空洞が増え・・・軽くなってしまう。
小型電池とモーターにすると重くなるが・・・回転時間が減り止まってしまう。
この問題解決に更に時間がかかったのだ。
天下布武 バージョンアップ完成へ
自身が持っている複数の電池とモーターを組み合わせて試行錯誤していると、
「マサさん、良いバッテリーとモーターがあるから、これでやらない?」
と連絡があった。トミーとはスカイプやメッセンジャーを使い連夜の打ち合わせをしている。
「じゃあ、一度そっち(東京大田区)へコマ持って行くよ」ということで上京!
東海TVさんも同行して1年ぶりにトミーと再会!そして打ち合わせ。その場で改良したり、新しいアイデアを図面化したりしてるうちに、
「外を重いガードにしてみるか!?」となり、結局再度作成を始める事にした。
内部(電池+モーター+接地用お皿)を軽量化して電池消耗を減らし、外部を重量級タングステン鋼で鎧化する。この構想で行くことに決めたのである。
そして試行錯誤の末 試作2へ
小型バッテリーを2個並列搭載できるこのタイプは総時間14分。
1試合1分30秒(待った30秒含む)×2試合 合計3分
これを優勝まで5回戦なのでトータル15分・・・ギリギリ足りない。
トミーの「1試合もっと対戦時間短いから大丈夫じゃない?」、
奥様の「同体取り直しがあれば足りないし、何が起きてもバッテリーはOKって自信があった方が、ハプニングが起きてもあたふたしないよ」と。結果不安は無くすことで一致し、大型電池+大型モーターに変更再加工へ。
まだまだ、続く試作3
試作1号か?試作3号か?で20mm×60mmの電柱の方が面白いとの事で決定した。
本当は試作1号の方が低重心で倒れにくいが、協会が定めた新ルールに対して、ドンピシャの大きさにしたかった。
重心バランスが悪い形状でもそこは職人の意地でもある。
弱点の克服
天下布武という名のコマは、高重心によってバランスが悪い。
最強だった【風林火山】とは違い弱点が多い。
しかしそれを補うだけの回転時間と見た目の威圧感がある。ある意味異様である。初戦の相手は例え優勝候補であろうと、戸惑い、なすすべもなく負けるだろうと思っていた。相手が対策を練る事のできるのは2回戦からだと思っていた。
弱点が多いからこそ、その対処方法を最初から考えて戦いに挑んでいたのである。
前夜に決めていた戦法は、
1・同じ所に置かなくて、自分は土俵隅いっぱいに置き、トミーは後ろにコマが通るぐらい開けて置く。その理由は、相手の目線を変えて失投を誘うためである。
2・羽物には先ず中心に置く。その状況を見て、トミーの場所を変更する。重量があり中心から飛ばされ場外落ちは無いため、倒れて同体になり取り直しになる可能性があり、そうなれば相手が失投する可能性があるからである。
3・当てにくるコマに対しては横にスライドしてかわす。
4・内部の接触不良が処置できるようにセロテープの予備を予め蓋に貼っておく。
そして、世界コマ大戦へ・・・勝負所の2回戦1投目 強豪古川電気製作所岐阜工場さんとの戦い
天下布武に勝つには当てて倒すしかない。
当然、相手投手は狙いに来ることは分かっていた・・・・が・・
やはり会場の雰囲気と緊張感ですっかり忘れていた。
2回戦の1試合目に強豪古川電気製作所岐阜工場さんとの戦いがすべてだった!!
その試合は普通に回した対戦だったので自分が1勝した。
もしこの試合、コマを当てにきていたら負けていたと思う。よける事をすっかり忘れていたのである((((;゚Д゚))))
その後トミーが当てられ倒されたのを見て、「すごいなあ、よく2cmの鉄柱に当てられるなあ?!」と感心した。
そして、忘れていた「よける行動」を思い出したのである。
意外にも負けの焦りが無く、その後連勝して無事に勝ち進んだ・・・
大会を終えて
・ジャイロコマという選択の事
・トミーと組んで交代で投げる事
・抽選会でのブロック分けの事
・相手の出場コマ予測の事
・1回戦から決勝戦までの対戦方法の事
・羽物コマと対戦が無かった事
世界一になるというパズルにすべてのピースが完璧にはまって完成したという感じだった。1回戦で負けても優勝してもあのコマを世に出した時点で賛否両論になる。それならば、優勝した方が良い!
【天下布武】は審判部が何一つ問題なしと答えたコマなのだから。
【最高最強の相棒 トミー・さなみー・ハム太郎に感謝】
そして、奥様の最高最恐のアドバイスに感謝です<(_ _)>
2015年3月16日
(有)カジミツ 松宮